Tuesday, March 15, 2011

大震災の日



最初の地震が起きた時、僕は六本木で打合せをしていた。
古いビルの地下にあるイベントスペースで4〜5人でテーブルを囲んでいた時、
足元が少しずつふわふわしだした。
誰かが「地震だ!」と叫んだ。

みんな最初は様子見という感じだったけどスケルトンの天井からぶら下がっている空調機がブランコのように揺れ始めた頃、「これはさすがにヤバい、外に出よう」と声を掛け合い建物から逃げ出す。地下から上がる階段を踏む足元がぐにゃぐにゃしているように感じて転びそうになる。

地上に出たところは首都高速道路の真下。
すでにたくさんの人が周りの建物から出てきて不安そうに空を見上げていた。

なんだか聞いたことのあるような大きな音がきこえる。荒れてる海に浮いてるフェリーのような重たい鉄でできた巨大なものがぶつかりあうような、ガシャンガシャン、ゴロンゴロンという重たく深い音。

振り返ると高架の首都高がいままで見たことのない揺れかたをしている。高速道路のライトが釣竿を思い切り振り回しているようにビュンビュンしなっている。その時に初めてこれは今まで経験したことないほどの大きな地震だということを自覚した。

いままで自分がいたところを振り返ると、となりのビルとぶつかりそうになりながら5〜6階建ての古い建物がこんにゃくのように揺れている。そのうち壁のタイルが道に落ち始めた。目の前道路に緊急停止したトラックや乗用車も船のように揺れている。

あたりの人々は唖然騒然。たまたま居合わせた警察官が意味もなく笛を吹きながら危ないからビルから離れて!と叫んでいる。ビルから離れればそこは首都高。頭の中に阪神の倒れた高速道路の映像がフラッシュバックする。そっちいっちゃまずい。

さりとてどこへ、、、首都高の真下の六本木通りの向こう側には平置きの駐車場が見えるけど、そこへ行くにはガシャガシャン音を立てて揺れている首都高の下を通らないといけない。

そりゃ嫌だととにかく広場、、、と考えたら、そういえば六本木ヒルズの前は広場になってるし、少しでも新しいビルのほうが少なくともそう簡単に倒壊はしなんじゃないかと思って周りの人達と一緒に走りだす。

ひとまずヒルズの前まで来てちょっと広いところに出たのでもう一度周りを見渡すと、
なんと六本木ヒルズの森タワーがびっくりするほど大きく左右に揺れていた。。

巨大な建造物に囲まれてその全てが見たことないほど揺れている。
どこにも逃げ場がない。

頭では建築物はあえてゆれることで地震に対応することになっているということは分かっているつもりでいた。しかし、現実にその足元にいるとさすがに思考が停止する。

揺れ始めがゆっくりだったこともあって、恐らく直下型じゃないのかなとか素人ながら考える。それにしてもどうすりゃいいのか。

このまま揺れ続けてあれ(森タワー)がこっちに倒れてきたらどうやったって逃げられない。とはいえ背後の首都高が倒れてきたらどっちにしても助からないな、
大げさじゃなく本気でそう思ったときに揺れは止まった。
その間数分だったのだと思うけどえらく長く感じた。


その後とにかく六本木は危ないと車で離れた。道すがら地震に気付かなかったという人もいたけど、どこでそれを経験するかでこれほどまでに感覚が違うのかとびっくりした。

後になってゴジラの足元で逃げまどう人たちの気持ちって、きっとこんな感じなんだと思った。あんな巨大な自分じゃどうしようもないものが動きまくるところなんて見たことない。本当に不気味で怖い。それが自分たちが作ったものだと思うと。

それにしても東京にいる僕らは怖い思いはしたかもしれないけど、それだけでなんとかなった。同じ時にわずか数百キロ先でこのとてつもない巨大なものに押し流された人達がいることはその直後に知った。

その恐ろしさを思うと身が震える。


今回の震災で被災した方々に心からお悔やみ申し上げます。


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